なぜコーヒー豆の最良の保存方法は「冷凍」でなく「冷蔵」なのか
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買ったばかりのコーヒーの袋を開くと、
良い香りが広がります。

コーヒーの香りは脳にα波をもたらし、
リラックス効果に優れている実験結果もあるほどです。

そんなコーヒーを、
どの様に保存しているでしょうか?
•常温保存
•冷蔵庫で保存
•冷凍庫で保存

いろいろな方法がありますが、
一体どれが1番良いのか。

その理由と保存の工夫についてお話します。

 

 

 

目次
1. 知っておきたい飲み手の「事情」と豆の「事情」
2. 袋についているアナって何のため?
3. 温度と湿度は低い方が良いけれど
4. 冷凍庫に入れると豆に起こってしまう事
5. 密閉容器と冷蔵保存の勧め
 5-1. 酸素になるべく触れない
 5-2. 湿度が低め
 5-3. 温度が低め
 5-4. 光の当たらない冷暗所
6. まとめ 保存のステップと「熟成」

 

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1. 知っておきたい飲み手の「事情」と豆の「事情」

コーヒーの「良し悪し」もしくは「微妙な違い」には、
一般的な飲み手の感ずる範囲の「違い」もあれば、
コーヒーを相当をこだわっているプロの方が分かる「違い」もあります。

焙煎後の数日から数週間の間の「微妙な差」であれば、
コーヒー好きの方であれば、
良い議論の的になるでしょう。

それほどの差ならばさほど問題になりませんが、
数ヶ月以上経ってしまうとドロっぽく、
変に酸っぱいマズイ味になってしまうのは明らかです。

せっかくコーヒーを飲むならば、
焙煎直後の良い状態の豆を手に入れ良い状態で淹れたい。

そこで世の中には、
様々なコーヒー豆の保存方法が紹介されています。

ところが実際のところは

• 焙煎されてから数週間の差であれば、
常温、冷蔵、冷凍の保存の違いによる味の差は、一般的にはあまり感じられない

• 数ヶ月後にかなり酸化が進んだ状態に関しては直ぐに分かりやすい

という現実があります。

しかしできることなら、
最善の方法でコーヒー豆を用意したいものですよね。

豆のことを良く理解した上で、
更に味わいを模索したいものです。

一方でわかってもらえる、もらえないに関わらず、
豆の「事情」は刻一刻と変化を遂げています。

このコーヒー豆の「事情」を理解していくことで、
より深く広い大人な楽しみ方を学んでいきましょう。

「科学的な反応が常に起こっている焙煎後の豆からは、発揮生の物質、ガスが出続けている」

ということをご存知だったでしょうか?

コーヒー豆のパッケージによく付いている、
丸いプラスチックのアナをヒントに
コーヒー豆の「事情」を探って見ましょう。

 

 

2. 袋についているアナって何のため?

スーパーやコーヒ店で売られているコーヒー豆のパック。

パンパンに膨らんでいるものもあれば、
ペシャンコなものもあります。

シュッと袋を押してみて良い香を嗅いだ方もいるでしょう。

あのアナの名前は、

「ワンウェイバルブ」 (One-way Valve)

つまり、
基本的に中にある空気は外へ出て、
入る事はないということです。

なぜワンウェイバルブが用いられているのでしょうか。

それは焙煎後に出続けているコーヒーのガスが
放出できるスペースを作るためなのです。

焙煎後、
豆は徐々に酸素と反応して酸化が始まります。

新鮮で良い具合に焙煎された豆は、
24時間後にエスプレッソに最適、
ドリップであれば数日後に落ち着いた時が1番良いと言われています。

豆が熟成していく過程と捉える事もできます。

その熟成酸化が進みすぎてしまうと、
ある時点で味が「ガクン」と落ちてしまうタイミングがあります。

それが一般的には一ヶ月から数ヶ月以内になります。

その酸化を少しでも遅らせるように、
「ワンウェイバルブ」の登場というわけです。

「酸化を防ぐなら、真空パックにすれば良いのでは?」とお思いになるかもしれませんが、
そこでやって来るのが「コーヒー豆から出るガス」なのです。

そのガスを放出するためにワンウェイバルブが使われているのです。

たまに見かける真空パックのコーヒー豆は、
ガスが完全に抜かれた状態でパックされているという事。

このスタイルですと、
深く炒ったタイプの豆で更にガスが抜かれた状態でしょう。

開けた時の広がる香りはほぼ無いものもあります。

しかしワンウェイバルブは万全ではありません。

かなり徹底したロースター(焙煎場)では、
パッケージをするときに窒素を含めて、
徹底的に酸化防止、酸化によるガスの放出を遅らせるという工夫もなされています。

ではコーヒー豆の避けられない「事情」を踏まえた上で、
より良い保存状態を作るには、
私たちはどういった工夫ができるでしょうか?

 

 

 

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3. 温度と湿度は低い方が良いけれど

コーヒー豆の空気との化学反応は、
常に起こってしまう避けられない「事情」。

それを防ぐためのワンウェイバルブだったわけですが、
他にも大事な要素があります。

まず、湿度は低い方が良いという事です。

焙煎後の豆の水分はたったの3%ほどです。

この状態では豆は湿気を吸い取りやすく、
劣化の速度を速めてしまいます。

梅雨の時期や湿気の多い地域では
特に乾燥剤などを使うと良いでしょう。

次に、
温度はやや低めの方が望ましいです。

もしも温度が高いと、
揮発性の高い「ガス」 が出るのを速めてしまいます。

ですので夏場は、
特に涼しい低めの温度で保つのがおすすめです。

さて、
「温度が低いのなら、キンキンに冷える冷凍庫が万全なはず」
とお考えかもしれません。

しかし、
実は冷凍は避けたいものなのです。

 

 

 

 

4. 冷凍庫に入れると豆に起こってしまう事

コーヒー豆をキンキンに冷凍庫で、
冷やして保存すれば1番良いはず。

そうお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし数週間か1ヶ月以内であれば、
断然冷蔵庫が良いでしょう。

「冷凍焼け」は聞き慣れた言葉だと思いますが、
まさしく冷凍焼けがコーヒー豆に起こってしまいやすいのです。

まず豆に含まれる水分が、
冷凍される事で固体から気体に昇華され抜けてしまいます。

そこへ酸素が入り込んで酸化が進んでしまいます。

更に氷の結晶がコーヒー豆の構成を破壊してしまい、
劣化につながってしまうのです。

この様に、
コーヒー豆を冷凍庫に保存すると、
劣化が進みやすい環境を作ってしまいます。

何より冷凍庫に保存した場合は、
そのまま忘れ去られて予期せぬ長期保存へと
繰り上げられてしまった、
というご経験お持ちの方もいらっしゃるかも知れません。

それでは一体コーヒー豆の「事情」にも、
私たちの「事情」にも、よい保存方法とは
どういったものなのでしょうか。

 

 

 

 

5. 密閉容器と冷蔵保存の勧め

密閉容器に入れた上での冷蔵保存では、
コーヒー豆の保存の良条件をクリアしています。

• 酸素になるべく触れない
• 湿度が低い
• 温度が低め
• 光の当たらない冷暗所

その理由についてお話しましょう。

 

 

5-1. 酸素になるべく触れない

まず酸化を防ぐために、
豆が酸素になるべく触れないようにします。
密閉容器に豆を保存します。
この場合ジップロックのような、
ペシャンコにして隙間が無くせる袋に入れてから収納するが一番望ましいでしょう。

 

5-2. 湿度が低い

パチンと蓋が閉まるプラスチックの密閉容器がおすすめですです。
収納した時点で湿気が閉じこもってしまっては中にこもるだけですが、
乾燥剤を中にいれるなどして湿気を低く保つ工夫ができます。

 

 

5-3. 温度が低め

「低め」というのがポイントです。
「4. 冷凍庫に入れると豆に起こってしまう事」でお話したように冷凍焼けは天敵です。
温度が低くしかも冷えすぎない冷蔵庫が、
コーヒーにとっては最適の温度です。

 

 

5-4. 光の当たらない冷暗所

意外かも知れませんが、
直射日光に関わらず蛍光灯の光であってもなるべく避けたいものなのです。
蛍光灯を一ヶ月当てた結果、
冷暗所での保存に比べて二倍の酸化が進んで劣化してしまう、
という実験結果もあるようです。
閉めている時には暗くなる冷蔵庫はその点でも優れています。

 

6. まとめ 保存のステップと「熟成」

コーヒー豆が焙煎後、
「化学反応によって劣化している」といってしまえば味気ないですよね。

しかしそれを
「時間の経過とともに熟成している」と捉えてみてはいかがでしょうか。

1.袋についているアナって何のため? でも触れましたが、
焙煎後24時間後はエスプレッソに、
数日後からはハンドドリップに適していると言われています。

豆を挽いてからは出来るだけ早く召し上がる方が、
微妙な新鮮さや熟成度合いを嗜む方にとっては好ましいでしょう。

熟成の環境を整え、
それぞれのタイミングで、
その時にしか出会えないコーヒーの仕上がりで頂く。

そんな大人の楽しみ方で是非お召し上がりください。

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保存のステップ

1) なるべく良い状態の豆を選ぶ、焙煎から近い日にちのものを選ぶ
2) 飲むペースによって異なりますが、小まめに必要分のみの量を買う
3) 開封後は乾燥剤を入れておく
4) ジップロックなどの空気の抜きやすい袋に入れる
5) 密閉型の容器に入れる ※日付を書いておくと召し上がるペースが分かりやすいです
6) 冷蔵庫に保存

 

 


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